顕微鏡
金魚の水槽の水を顕微鏡で見た。面白かったけれど、もっと高倍率の顕微鏡が欲しくなった。
金魚の水槽が、最近よく緑色に濁っている。夏至に近づき、紫外線も含めた太陽光線の入射が増え、植物の生産効率がよくなっているからであろうか。抹茶ドリンクのようで、とてもおいしそうだ。ちょっと飲んでみたい気もするが、そう言えば、小学五年生だったころ、教室で飼っていた金魚の水換えをしたことを思い出す。
なにぶんにも大きな水槽であったことから、水を換えるにも、水槽を水飲み場に持って行くこともできず、ひっくり返すこともできないのであった。四人の係は、空気ポンプの管を引っこ抜き、それでサイホンを試みることにした。
最初は、管を水に沈め、管の向きをあちこちに変えることによって、水を通そうとした。しかし、管が長いせいもあって、うまく行かない。そこで、某君が手を挙げた。「口で吸うのが一番だ」。彼は自ら管を口に含むと、あっけにとられている三人を尻目に、水を吸い始めた。よくよく考えると、管の端にまで水を満たす必要はないのだが、そこはそれ、彼は賢く勇敢な小学生ではあったものの、最後の最後まで水を吸って、うっぷと吐き出した。周囲で見守る我々は、それをみて思わず吹き出してしまったが、それもまた良い思い出である。
さて、我が家の水槽の水をまさか飲めるわけがなく、これで出来る遊びはなにかと考えること暫し。そう言えば、我が家には古い顕微鏡があったのでした。私が幼い頃に我が家に来たもので、大して使い方も解らないうちに仕舞い込まれ、転居や大掃除の際にもたまたま捨てずにあったという三十年前のもの。一緒にもらったプレパラートセットがあり、そこに貼り付いている花粉や種子などは覗いてみたものの、もともとのそれがなんであるかもよく判らない頃でもあり、興味をもって扱うには至らなかったのでした。今となって残っているのは、何やらの花粉一枚。これは真っ黒くろすけにそっくりな、でも少し紫色の。そしてサンプルの載っていない空白のが一枚。
空白の一枚に、水をとって垂らします。そして、一番小さい倍率から試しに覗く。光を入れる鏡の調整が結構面倒です。倍率が小さいと、ごみが点々としているだけです。水の表面張力で、点々のまわりが張りつめているのが見えるようではありますが。もう一段倍率を上げると、形が見えてきます。米粒のような、透き通って、少し緑色らしく見えるやつが居ます。また、絡まった糸のようなのも居ます。もう一段倍率を挙げるとき、ずらしてしまいました。米粒はどこかに行ってしまいましたが、角のようなコップ型、あるいは、短い管を束ねたようなのが居ます。みんな透き通って緑色をしています。うん。なかなか悪くない。ガラスを動かしながら、あちらこちらと見て歩くのが楽しい。古い顕微鏡だからか、プレパラートガラスに傷やゴミがついているせいか、いらんものが一杯見えます。また、私自身の目の角膜に傷があり(飛蚊症)、そのゴミが気になるし、片目でものを見るのに慣れないせいで、ひどく目が疲れます。
よくよく考えると、最初から用意され、何が何だかわからないサンプルを拡大してみて面白かろうはずはありません。自分が、これはどのように見えるのだろうと思いつつ、あるいは、これこそ大きくして見てみたいと思って見るものだけが面白いはずです。また、見るべきものを発見できなかった当時の私ですが、科学的な知識(雑学)を身につけた今になって考えると、もっとも面白いであろうものは、水の中に住む微生物でしょう。こんなものは、枯れ草の使った水たまりを少しばかりすくってくれば、いくらでも見ることができるはずです。こうして見ると、大人になって、いろいろな物事が解ると言うのも悪くはないものです。
中学生か高校生の頃、この顕微鏡の使い道を見いだしていれば、きっと違う人生を歩んでいることでしょう。まあ、中学から高校の生物と言うのはあまり面白くなかったように記憶します。いわば、詰まらないところだけを抽出して教えているような。大学生になって、時間生物学であるとか、社会生物学の存在を知って、遅まきながら生物物理などを指向したりもしましたが、結局のところ、深いところまで行けずに終りました。
手元にある顕微鏡は300倍までしか見えないようです。両目用を買っても置き場所にも困りそうですが、できれば800倍くらいで、PCにつながるような、そして安価なものがあると面白かろうと思います。顕微鏡なんてものは、子供には使いこなすことができないものであって、やはり大人ならではだと思います。
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Comments
http://www.mmjp.or.jp/S-OPT/vixen/TV.kennbi.html
これはいかがです?USBでPCにつながります。私にとって顕微鏡は商売道具で、職場にありとあらゆる顕微鏡がありますから、私は買いませんけれど。
これは透過型なので、薄い標本を作り、これを透過した光を拡大しています。この場合、薄い標本を作るのが普通の人には大変で、見たいものがあってもなかなか見えないのでは?我々は大仰な機械で、厚さ70nmの標本を作ったりしますが。
それで、一般には実体顕微鏡の方がおもしろのように思いますよ。これは物体の表面で反射した光を拡大しますから、生きているものをそのまま見ることが出来ます。自分の指の指紋とかもすごいですよ。ビクセン SL-30 20,475円はどうかな?
Posted by: はかせ | 2005.06.07 12:26 PM
金魚の水槽の藻を除去するのに、イシマキガイなどは入れないのですか?ヤマトヌマエビも藻を食べてくれますが、たぶん、金魚に食べられてしまいそう。
ところで、水を見るならカバーグラスをかけた方が断然楽ですよ。なんなら、スライドグラスとカバーグラスを一箱送ってさし上げますよ。
Posted by: はかせ | 2005.06.07 12:31 PM
はかせ様。ご厚情に感謝致します。ともあれ、スライドグラスをまかなうほどの収入は得ておりますので、お気持ちだけで結構です。顕微鏡をお送り頂けるのなら、考えを変えますが、もしかすると部屋に入りきらないかも知れないですね。それとも、すてきなサンプル入りのスライドグラス。はかせ氏謹製の赤血球・・・。そんなことはまさかありませんでしょう。とりあえず、松脂の粉あるいは弓の毛羽立ちでも覗いて性能比較の一助にしましょうか。
ガラスは取り扱いが面倒なので、当座はプラ板でごまかそうと思っていますが、今もなおガラス製しかないのでしょうか。子供用にはプラスチックが安全で安価でよかろうと思います。透明度とか、耐酸性なんて、うるさいことは言いっこなしで。
何はともあれ、金魚すくいで得た魚なので、いつまで生きることやらと、百円で飼ったプラスチックの水槽に、三百円(あるいは五百円)の水草とともに暮らしております。江戸時代の飼い方とさして変わりはないでしょう。紅白の二匹だったので、「紅」と「白」と名付けておりました。白は三日もせずにみまかりまして、紅が一年ほども生きているのが不思議なほどです。
空気ポンプのついた、水を循環させる機能つきの水槽セットが三千何がしでしたので、これを買おうと思いつつ、それならば、水草を食べる巻貝(名前は知りませんでした)だけではなく、閉鎖性生態系のごとく、沼海老と目高を放り込んでやろうと思いつつ、実行のない私でございます。
その昔は、学研の図鑑「飼育と観察」を見て、源五郎を飼いたいと思っていましたが、子供のうちは源五郎君に顔を合わせることがついぞなく、大人になってから、仕事の途上なる北海道(空知吉野だったかな?)の田圃で、源五郎君にめぐり会った時には、感激してつい見入ってしまいました。五月の末だったでしょうか、水を張ったばかりの田圃の隅っこの浅いところに、ちいさな源五郎が何匹も泳いでいるのを飽きずに眺めた覚えがあります。
閑話休題。顕微鏡。実体の方が、人間の感覚に近くて、教育的だと思うのですが、私のおもちゃとしては高倍率に惹かれます。ともあれ、覗く機会がそうそうあるとも思えず、まさにおもちゃなのですから、子供に向くかどうか、あるいは、適切な時期なのかどうかを考えようと思います(そうしないと、大蔵大臣からお許しがでないですから)。
Posted by: 淮 | 2005.06.08 11:12 PM