« 量子力学を考える。 | Main | 今週の戯れ歌 »

読書の記録(2019年1月)

生きている兵隊 石川達三
古書店で百円。「生きている兵隊」と「武漢作戦」が併載されている。
戦時に書かれた貴重な書。前者は中国大陸での兵隊の日常、後者は武漢作戦に至る全体像を描こうとしているようである。特に後者では、兵站、衛生兵、船舶工兵等の描写が珍しく感じる。海軍が中国本土を遡行し、陸戦隊が(上海以外で)戦闘を行っていたのは全く知らなかった。

タクシードライバー日誌 梁石日
古書店で百円。この本を初めて見かけたのは、大学生協書籍部であったように思う。硬質な文章が印象に残ったが、齢五十にして読むと、歯噛みするような苛立たしさが伝わって来るばかりである。私という者が変わってしまったのだろう。それも大きく。

スナーク狩り ルイス・キャロル、トーヴェ・ヤンソン絵、穂村弘訳
ロマチンックロシア展に行って渋谷でついでに買った本。
キャロルのナンセンス自由詩?に、幻想的で不機嫌なヤンソンの絵とあらば買わざるべからず。翻訳もまたなかなかのもので、まことに満足した。
自由国民社「世界の幻想文学」に四方田犬彦氏が韻文で訳されているのが、ほぼ全訳に近いことを知る。ともあれ、双方あって双方楽しいというやつである。そしてまた、双方が反歌を書いているのもまた良きかな。

元年春之祭 陸秋槎、稲村文吾
古書店で購入。古代中国ミステリということで、私の「遠くへ行きたい」欲はかなり満たされる。漢文好きでも少々辛いところはあるが、なかなか楽しめた。
登場人物の性格付けは、少々きつく感じるが。

戦う操縦士 サン=テグジュペリ 堀口大学
昔々買った本。
ふと思うと、複葉機等の古典機が好きなのは、サン=テグジュペリの南方郵便機の印象が強かったからかもしれない。リチャード・バック「イリュージョン」、「Night Swallows」(ロシアの女性操縦士たちのテレビドラマ。)、宮崎駿「雑想ノート」などなど。
特に、リチャード・バックでは、アメリカの田舎を、まるでオートバイでとろとろ走るように複葉機で飛び回り、畑でキャンプする様が非常に印象的であり、自分もこんな生活をしてみたい、と思わせるものがあった。
(そういえば、ヘミングウェイの「心のふたつある大きな川」もまた、キャンプ小説であり、憧れたものだった。山に登る努力をしたくはないが、キャンプはしたい私である。)

そしてまた思い返すに、私は、若い時分から私なりに「戦う操縦士」であろうとしてきたのではないだろうか。そして、そうした書に若くして触れることができたことを幸いであると思う。若かった私が最初に触れた「文学」は「戦う操縦士」であったし、その衝撃は計り知れないものがある。

アラスへの飛行を行った機体を調べたところ(インターネットで検索すればすぐ分かる。良い時代になったものだ)。ブロック M.B.174(http://military.sakura.ne.jp/world/w_mb174.htm) らしい。思いもよらない妙な飛行機だ。
「観測士官であるデュテルトルは垂直方向に地上を見ているが、操縦士である自分は、斜め方向にしか地上を観察することはできない云々」と記されている意味がよくわかった。これが分かるまでに、おおよそ四十年。長生きをして良いこともあるものだ。

トレチャコフ美術館所蔵品展に行ってこられた。子供の頃家に図録があって親しんだ絵もあり、また、長年にわたってみたいと思っていた絵をみることができ、非常にうれしかった。
ロシア小説を好んでよく読んでいることもあり、また、最近は、ロシアの映画やドラマをyoutubeでみられることもあって、風景も人もなんとなう親しみを感じているというのもある。


マーラーの交響曲第九番を聴く。クルト・ザンデルリンク指揮、ベルリン交響楽団。私にとってのこの曲の初CDであろう。この曲を弾いたことが二度あるにも関わらず、第一楽章が「andante」であることにいつも意外の感を持つ。多くの交響曲の第一楽章がallegroであるためであろうか。少なくともallegrettoであろうと思ってしまうのである。
私にとって、マーラーは、十五の歳の春にラジオで聴いた第七番に始まり、すぐさまレコード店でクーベリック指揮バイエルン放送交響楽団のLPレコードを入手し、その夏はそのレコードばかり聴いていた。その秋に聴いた第九番(バルビローリ指揮ベルリンフィルハーモニー管弦楽団)がそれに続く。
大学への受験勉強で鬱屈していたころ、第一番から順繰りに一日でどこまで聴けるか試したこともある。多分、第七番の終楽章か、第八番の第一部で音を上げたように記憶している。思えば、悲しくもわびしくも豊かな青春時代であった。

夕方、通勤列車を降り、改札口を出たところで、母親に連れられた幼い娘さんが、男性に駆け寄る。「パパ、らーい好き」と大きな声で言いながら、男性の膝に抱きつく娘さん。大変に微笑ましい。父よ、人生の盛期を最大限に楽しむが良い。

|

« 量子力学を考える。 | Main | 今週の戯れ歌 »

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack


Listed below are links to weblogs that reference 読書の記録(2019年1月):

« 量子力学を考える。 | Main | 今週の戯れ歌 »