読書の記録(2024年4月)
絶対製造工場 カレル・チャペック 飯島周
読んでよかった。冒頭のいささかファンタジー調から話が重くなっていく様に引き込まれる。前半と後半で話の進み方が大きく異なるが、執筆事情によるものと、「前書き」にある(後書き部分に置かれているが、これが適正であろう)。
「絶対子」でなく「絶対」とすべきとのことだが、おおむね賛成。一方「工場」でなく「装置」でも良いのではないか、と思った。
クラカチットも早く読みたい。また、山椒魚戦争は後に書かれた作品らしい、これらを読んだ後に再読したい(どこにしまったかな?)。
「グルメっぽく」は「食通らしく」の方が良いな。それ以外、特に気になる訳語はなかった。
ちゃんと描いてますからっ! 星里もちる
漫画。漫画家の父の代筆を娘がするお話。楽しいホラー?。楽しく読めたが、ほんとホラー。毎回、主人公は逃げた父の代わりに〆切に追われている。漫画なんで良いけど、親として務めは果たしましょうね(笑)。
私のKindleは、これと「さんてつ」(吉本浩二)くらいしか入っていない。
家の歴史を書く 朴沙羅
在日韓国人三世による家族史。まぎれもなく日本の現代史の一角をなす在日韓国人の歴史について、私は非常に無知だ。本一冊読んで急に様々なことが解るようになる訳ではないが、とは言え、自分が想像もしなかったことがこんなにもある、と言うだけでも貴重な学びである。
著者がご親族から聞き書きを行ったものであり、発言の臨場感もある一方、必ずしも説明が万全でなかったり、私が大阪方言に疎いこともあり、「自分は完全には理解できていないな」と思いつつの読書だったが、どんなに説明されたからと言って「完全なる理解」ができるものでもなく、こうした自覚自体に意味があるように思う。
日本の敗戦から、南北朝鮮に分かれるまで、安穏ならざる日々が済州島にあり、日本との往復が多くなされており、そのルートが確立していたことなども、新しい気づきであった。
書中、最も感銘を受けたのは、「字が読めない恐怖」であった。このこと自体は直接的には本書の本題ではないが、今、現に書物を読んでいる身として恐怖せずにはいられなかった。自分とて外国に行くと、これに近い恐怖を覚えるが、あらゆる文字を読めず・書けずであれば恐怖の度合いは大きいだろう。
読んで良かった。
真珠湾捕虜収容所の捕虜たち オーティス・ケーリ
最近の私の興味は、「戦闘以外の戦争の諸相」であるようだ。「家の歴史を書く」もある種そうした興味で読んだ(第二次世界大戦の戦後処理のひとつ)。
この本は読んでよかった。今年最高の読書かも知れぬ。そしてまた、私が求めてきた日本人論としても。
これまで、伊藤整や網野善彦を双璧としてきたが、この書は読まざるべからず。そしてまた、日本で育ち、日本を愛するケーリという、最高の観察者には感謝してもしきれないと感じた。
青年茂吉 北杜夫
北杜夫は、自伝において、トーマス・マンへの憧れを語り、筆名も「トニオ・クレーゲル」に倣ったものと書いているが、もうひとつ歌人である父斎藤茂吉への憧れも強くあったとのこと、少々意外の感あり。
いわゆる北の叙情的フモールが抑制的ではあるが、北杜夫を好む私には面白く読める。が、私があまり詩歌読みとして集中力のないだらし無い人間であるのを発見し少々残念(自分が自分に残念)。
ザ・ロード アメリカ放浪記 ジャック・ロンドン、川本三郎
「ホーボー」なる語を知ったのは1970年代の鉄道模型趣味誌のコラム欄「ミキスト」。ついで、映画「北国の帝王」をテレビ放映で見た。
鉄道が舞台になる映画だから、というので見たが、ホーボーと車掌(ブレーキ手)の血みどろの闘いであって、子供が見るような映画ではなかった。
本書は
訳も基本的に良いが、「操作場」は「操車場」の誤りだろう。
また、blined car の解説がロンドンにより本文中にされているが、いささかわかりにくい。下記ウェブページで確認すると、車両間を移動するための貫通扉がない車両、客車列車において手荷物を運ぶための荷物車をいうらしい。で、荷物が積み上がっていて、車両内を移動できないことから、貫通扉を施錠閉鎖しているらしい。
https://www.hobonickels.org/insearch/rails.htm
最近のちくま文庫は面白い本が多い。岩波の翻訳系も意欲的で良い。ちょいと幸せ。
「ゲーデル・エッシャー・バッハ」を久しぶりに繙いた。「はしゃ蟻塚伯母さん」の用字を確認するためであった。すっきりわかりやすい語ではないが、おそらくは苦衷の訳語であろう。AI時代にあって、本書はふたたび顧みられても良いと思うが、そういう話は耳にしない。
「トムは真夜中の庭で」の翻訳者と「極北のかげに」の著者が同じであることに気づいた。
英語とロシア語に通暁していることに驚き。と思ったら、エスペランティストなのね。
古い鉄道模型趣味誌を引っ張り出して読む。
その時、そうは思っていなくとも、長い時間の中で、私はこの雑誌に大きな影響を受けたのだと、振り返る。
古い機関車、古い列車への愛好は、これらの記事を通して、長い時間の中で育まれたものだ。
●雑感
4月初め、東京で電車に乗ると、日本各地から集められた新入社員を見かける。どうやら入社式と新人研修を東京本社で行うようだ。
そこそこ空いている電車に乗ってきても「わっ。混んでる」などと言って微笑ましい。賢しい若者だと「自分たち(各地から集められた新入社員)が乗るから混むんだよ」と、己の客観視できている。あるいは「これはきっと混んでいるうちに入らないんだよ」などと言うも微笑ましい。
通りすがりの他人でしかない私だが、諸氏諸姉らの健康と多幸を祈っておるぞよ。
昔、息子が入院した。毎食保護者が面会室で食事を受け取る方式だったが、ある時、急患があった夕食だけ「部屋に届けます」と告知があった。何がどうとは言えないけれど、空気が厳しくなったようだった。何かが起こった予感がした。
私は病院から帰宅するためであったろうか。偶然面会室を通った。そこで、テーブルに突っ伏して泣き崩れる女性の後ろ姿と、女性に向き合い声をかけるともなく静かに慰めようとする男性の姿を遠目に見た。
私は、あんなにも悲しい風景は見たことがないし、これからも見ることはないだろう。
その理由を聞くことも見ることもなかったけれど、小児科病棟で生起する事柄であるから、事情は察するに余りある。
あれから三十年近く経つけれどあの風景は忘れられない。あの悲しみが癒えることがあるのだろうか。
閉店した百貨店が大きな割引率で通信販売をしている広告をネットで見かけ、サイトを覗いてみる。
何百万円もする時計が何十万円になったところで自分には関係ない、ということを確認できてよかった。
西郷隆盛は人見寧に天下を問われ、「たった十六文で腹を養う自分になにがわかろうか」と言っているが、衣服の量販店でさえ安売りの棚を漁る自分に何がわかろうか、ということであろう。
と思っていたが、これらサイトはどうやら「なりすまし」であるらしい。
問い合わせ先のメールアドレスが「hotmail.com」であるので、推して知るべし。
複数の百貨店について、同一らしいサイトが表示される(百貨店名は入れ替わる)ので、要注意。
ファインマンの回想録には、トリニティ実験成功に喜ぶマンハッタン計画参加者の中で、オッペンハイマーだけがすでに被害を考えて暗澹としていた・・・とあったような記憶がある(が確信がない)。
映画「オッペンハイマー」を見に行く前に確認しなければ・・・と思いつつ。
ヒナステラのピアノ曲「ミロンガ」なかなか良い曲。
動画。サルマン・カーンあるいはDhoomなどヒンドゥー系を見ている。
いずれも安心して見ていられる。水戸黄門(大好き)と同レベル。わかりやすい表現も良い。
たとえば:
https://www.youtube.com/watch?v=cC8mYfFKeGE
私は、有名な女性アイドル柏木由紀さんの写真の入った名刺を持っている。柏木さんご自身の名刺ではない。「鹿児島県の観光大使としての柏木さんの写真が入った、鹿児島県職員の方の名刺」だ。名刺を下さった方が、柏木さんとは似ても似つかぬ中年男性(いや、眼が大きいところは似ていたかも)だったのも記憶に残る。
ちょっとおもしろかったので、メモ。私は対旋律・対位法に非常な興味がある。立体的な音楽を好む。
COVER - Ce matin-là, Barbara
https://www.youtube.com/watch?v=UwfPKcTNv-4
ベートーヴェンの弦楽四重奏曲第14番を練習している。難しい曲だ。
先般の練習録音を聴いてみた。全体として、安全側で演奏している。微温的。
安全対策は必要だが、温度を上げるところ、上げ方・下げ方を考える必要がある。全体を見通しておらず、ひたすら安全運転で「流して」いる状態。(自動車の運転は安全であるべきだけれど、室内楽は危険を冒した方が面白い)。
No.1 音程がもう少し良いと良い。だんだん整合してくるが。最後どこまで盛り上げるか?ちょいと遅くする?
No.2 私、動機がせかせかしとる。
No.3 短いのでヨシ。
No.4 ちょっとタルいかな?変奏らしさ、変奏ごとの方向性を出したい。そもそも長いので。
No.5 事故る。その後、強制リカバー(笑)。
No.6 音程ですね。
No.7 疲れが出ますね。
まだまだこれからだ。頑張ろう!
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