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読書の記録(2024年8月)

浴槽で発見された手記 スタニスワフ・レム
いつもの難解で饒舌なレム節。
カフカの「城」との類似性が指摘されているようだが、「城」においては、「城」の内部構造が一切見えず、K対城の1:1構造になっているが、レムは当然そんな過去踏襲はせず、1:NでありN:Nであり、さらに再帰的構造や群:群の対応があったり、システムそのものが複雑奇怪になっていく印象がある。
「城」もまた私達の日常だが、「浴槽で発見された手記」もまた、私の日常である。

たくさんのふしぎ おいしさつながる 昆布の本
昆布に関係するおいしいものとして、「鱈の昆布〆」が出てくるのが嬉しい。 昔、私が北海道人に「北海道でおいしいものは?」と問うた第一声がこれであった。 「どこで食べられるのか?」と問うと、「近所の漁師にもらった鱈をおふくろが昆布〆にしてくれた・・・」ということで、結局私は食べられなかった。 こうした思い出があってもなくても楽しい昆布の本だった。羅臼と富山の歴史的な関係も述べられていて、例のごとく行き届いた本だった。 (色々な種類の昆布の違いについてももっと知りたい。なぜ地域によって異なる食味の昆布ができるのか、また、食味の違いは生物としてどのような違いなのか、など)。

独裁者の学校 エーリッヒ・ケストナー
簡素にして皮肉の効いた戯曲。独裁政権下で迫害されつつも生き抜いたケストナーだけに終幕もまた悲劇。

思いもよらない日本の見かた モーガン、ルネ
編集部が中国ヘイトをかましたり、不愉快な本。
モーガンさんもルネさんも、日本において外国人として様々な苦労をされていると私は想像するけれど、そういう方が、ヘイトを内在するこういう本にお出になっていて、私は悲しい。
この本を見て腹が立って来たので、「それはわたしが外国人だから?――日本の入管で起こっていること」(安田菜津紀)を読もうと思う。 前提として、ヨイショは社会の潤滑油で必要不可欠と私は考えている。だが、ヨイショも過ぎると身に毒(これ重要)。
購入前に出版社名をよくよく確認するべきだった。

ブルーノ・タウト「日本美の再発見」に書かれた日本礼賛も、行く宛なき亡命者タウトが自分の居場所を作るために行った説を耳にしたことがある。タウトを(ちょいと)読んでみたが、建築物の美は書かれているが、日本の日常をボロクソに書いている部分もあり、まあまあ正直な偏屈爺さんだなと思った。だからと言って、奴さんがヨイショをしていないとは限らないが。
そう言えば、谷崎の「陰影礼賛」もちらっと読んだことがあるが、日本の便所を褒めてたりして、エログロ風味というか、嗜虐/被虐的というか、まっとうな趣味で書いたとは思われない、冗談半分・韜晦全開の文章なので、あれをもって日本文化の正当な評価のひとつとして扱うのは賛成できない、と思った。まあ、そうしたヒネ味こそが日本文化であるという主張には賛同するけれど。

アーキビストという仕事を知る。
チャペックの戯曲「ロボット」には「アルクイスト建築士 Alquist: Clerk of works」なる重要登場人物がある。
この方の名はアーキビストとは関係ないのだろうけれど、ちょっと気になった。
https://www.aozora.gr.jp/cards/001236/files/46345_23174.html

キリスト教美術をたのしむ 旧約聖書篇 金沢百枝
少しずつ読んできたもの。一点悲しい感想は「(老眼の者にとっては)絵が小さい」。価格、判型から言って仕方がないのであるけれど。
本文と絵がどうしても離れるのも(寝転がって読む者には)読みづらい。
とは言え、中身は非常に楽しい。欧州・キリスト教の歴史の長さを思いつつ、美術として様々な技法・画風を楽しむことができるし、キリスト教の考え方や欧州の歴史の中での重点の変化などにも触れることができる。

天幕のジャドゥーガル 第4巻 トマトスープ
登場人物は、それぞれに、それなりに「善意の人たち」なのだが、あまりにも根深い対立。これからどうなるのか気になる。
なかなか登場人物とその関係が覚えられないので、紙の本が絶対に必要。
そして、早く第5巻出てくれ!気になる。

編集長敬白 名取紀之
もともとブロク(的ネット記事)だったもの。凄い人は若い時から凄かったのだなあ、と恐れ入る。
まあ、自分のごとき微温い趣味者ももちろんいて良いと思うけれど。

小林信夫の模型世界 小林信夫
鉄道模型界で、有名な小林氏の鉄道模型趣味誌掲載記事の抜粋集。
昭和の頃に読んで懐かしい記事もあり、最近古書として買って見つけた記事もあり、さらには未見のものもあり、大変楽しく読むことができた。 小林氏の思い出や思想が端々に語られており、なにか「全人像」を見られる心地がする。私も愛知県出身であり、小工場の思い出など共通するものがあるようにも思った。勝手な思い入れにしか過ぎないのはよくわかっているけどね。

古書店で「部落の女医」を買う。非常に面白そう。「気違い部落周游紀行」と同じような、文化人類学の香りを感ずる。
「日中15年戦争」を買う。ちくま文庫の戦争関連書は買わざるべからず(買うべき)。文庫本が2000円近くするようになったことを嘆きつつ。とはいえ、本書は相当の大部であるが。

海と毒薬(遠藤周作)、キャラメル工場から(佐多稲子)、太陽の季節(石原慎太郎)などを少しめくる。どうするかのう。

以下は買い忘れ防止の覚書:
女ひとり、インドのヒマラヤでバイクに乗る。2024/9/26 里中 はるか (著)
ごはんが楽しみ 2024/10/7 井田 千秋
線路沿い街歩き 小川真二郎作品集 2024/10/11 小川真二郎
(女性の執筆した本ばかり買うのも悪い気がするが、この世の半分は女性なので、そーなるのも当然であろうよ。)

●雑感

ちょっと不思議なアニメーション
SUNDOWN - Animation Short Film 2020 - GOBELINS
https://www.youtube.com/watch?v=jKh-DP89FPY

Wikipediaを眺めて遊んでいたら「酒田戦争」なる言葉を知った。
住軽アルミニウム工業は5年で会社解散。
鳴海小学校の同級生で住友軽金属の社宅に住む者がおり、親が酒田に転勤になった後、数年経って名古屋に戻った・・・というのは今思えばこれだ。会社の盛衰は様々な人生に影響を与えるのだね。

平成のはじめ頃、伯父に呼ばれて食事をした。
「自分が就職した昭和三十年代、人気業種は『三白(さんぱく。砂糖、セメント、肥料原料である硫化アンモニウム)』だった。自動車産業は不人気で、自分のような『落ちこぼれ』の就職先だった。だから、今、人気業種に行っても良いが、不人気業種に行くのも良いかも知れない」と言われた。
平成のはじめ頃、電機メーカー、自動車メーカーなどが人気であったろうか。大学の優秀な人々はそれら産業に数多く就職した。
近年、それらの産業が傾き始めている。あれだけ優秀な人々を集めたのにと本当に驚くしかない。
(自分はそうした優良産業・優良企業には採用されないといささか僻んでいたのだが。。。)

国立音楽大学の所在地が立川市であり、国立駅から徒歩1時間を要することを知った。
うむむ。立川音楽大学か、(最寄りの駅名をとって)玉川上水音楽大学になるしかないのか・・・。まあ、旧立地名を使っている学校はいっぱいあるから、もちろん無問題だけど。

ピクシブ大百科にある「メイツ星人」の解説。「暴徒ぼうと」とあるべきところ、「暴従ぼうじゅう?」となっている。直したもんだか。
ヤフーオークションで、「上野鉄道」の仮名を「こうげつ」と振って模型の機関車を売っている人がいる。箱には「こうづけ」と正しく書いてあるのだが。。。
同様に名鉄電車にある行き先表示を「黒谷 野汲」と読み解いている方がいた。「黒野⇔谷汲」なんだがなあ。
三省堂書店の在庫で「レイアウトの留意線とその実例」というのがあった。正しくは「レイアウトの留置線とその実例」だね。
アニメである「キャシャーン」は「新造人間」なんだ。落語なんかで「ご新造さん」が出てくる(無関係)。

乗ったことのある在来線特急(国鉄JR)
しらさぎ、ひだ、あさま、北斗星、
北斗、オホーツク、踊り子、かいじ、
あずさ、南紀、すずらん、スーパーカムイ、とかち?(おおぞら?) 
新幹線での移動が多かったので、在来線特急とは縁が薄くなりがち。北海道には縁があったので、意外とここで乗っている。山陽・九州方面は壊滅的だね。

HPVワクチンを巡る集団訴訟の鈴木エイト氏によるご報告を読む。
原告の女性達が健康でなく幸福でないことに、まことにご同情申し上げたいが、一方で、裁判というものの厳正さにも心打たれる。
HPVワクチンについては、名古屋コホート研究でも、危険性は見出されないことが報告されていたように思う。
https://x.com/cult_and_fraud/status/1821159033992310855
https://x.com/bar1star/status/1821469563458113850
「科学的見地から妥当な判決が出て欲しいと思うし、何より原告側女性たちが正しい形で救われて欲しいと思う。」という方のお言葉に全面的に賛同する。

ロシアではボールベアリングが払底しつつあり鉄道運行に支障が出ているとか。
ベアリングやピストンリングは高精度な消耗品なので、こういうことになりがちだろう。
飛行機のタービンブレードなんかもその仲間か?

オリンピックで唯一見ようと思ったサッカー(フランス対スペイン)見逃しちゃった。正確には録画忘れ。
まあ、無問題。他は見ていない。ニュースで流れているのを見た程度。
昔は「アマチュアの祭典」であり「参加することに意義がある」だった。それが、商業主義、プロフェショナル参加、国の争いとなり、さらには、汚職の温床となるにつけ、運動家諸氏諸姉を見てはあわれを催すになり、見る価値を感じなくなった。

AppleLossLess でUbuntu上で再生できないファイルがいくつかある。どこかに報告すると喜ばれたりしないのか?
そのうち調べよう。

「不思議遊星歯車機構」について調べてみる。
大きな減速比をとれるようだ。
で、小型モーターと組み合わせた製品もある。
安価ではなさそうだが、一度遊んでみたいものだ。
https://www.icomes.co.jp/custom/microactuator/
もちろん、価格以外の事情もあって模型用になっていないと思うけれど、こーゆーことを考えるのが楽しいのだ。
(口だけ番長)
続けて、サイクロ減速機についても調べる。『歯車』でなく波型なのにきちんと噛み合い、波型だからこそ歯が欠けたりしない(おそらく、特定箇所のみに力がかからない)のが格好良い。 ただし、鉄道車両などに興味があるものとしては、可変速でないのが残念(不思議遊星歯車もだが)。

サイクロ減速機、波波型なので、ゆるい結合かと思いきや、しっかり力が伝わり、かつ、尖った部分がないので、そこが欠けるということもないとは、まさにアンサンブルの理想。
よってして「サイクロ弦楽四重奏団」を旗揚げしようか。
https://www.zokeisha.com/zahs/cy.html
でも、サイクロイド曲線かと思ったら、エピトロコイド平行曲線なのね(意味はわからん)。
サイクロ弦楽四重奏団あらためエピトロコイド弦楽四重奏団
まあ、サイクロ減速機は商標で、一般名詞は cycloidal drive あるいは cycloidal speed reducer というそうだ。

トマトソースパスタを作る際、料理酒のつもりで味醂を入れてしまった。そんなに変ではなかった!
玉葱のみじん切りを炒め、豚こま切れを細かに切ってそこに入れ、塩胡椒少々。
火通りをよくしようと、酒(というか味醂)。
人参細切れ。
茄子の乱切り(あく抜き少々)
オリーブオイル追加
缶詰トマトと生トマト乱切り、昆布茶を投入。
茹で上がったパスタを投入して混ぜる。しばし経ったら皿に盛る。
「パスタなんて『焼きそば』」という言葉を聞いたことがあるが、私が作るパスタに関して言えばそのとおり。

さらにその後のトマトパスタは、茹でた麺に、生トマト、鯖の水煮(レモン風味)、塩昆布(細切れ)、オリーブオイル、バジルを和えてみた。まあ、ふつうの食べ物。ルッコラなどを入れるときっとハイソな食べ物になるだろう。
もうひと品は、長葱、梅干しの汁、赤紫蘇のふりかけ、長芋の刻んだのを和えたパスタ。
あまり火を使わない、というのをしてみた。

『大提琴&鋼琴經典歌曲串燒(工作、通車、日常、放鬆)』なるプログラムをyoutubeで見かける。
大提琴はチェロ、鋼琴はピアノ、経典歌曲はクラシック歌曲。ここまでは良い。「串焼」は「メドレー」らしい。
もちろん「串焼」だけだとまさに串焼らしいが、「歌曲串焼」はメドレーになるようだ。ちょっと美味しそう。
カッコ内の4つは「仕事、交通、日常生活、リラクゼーション」。
最後の「放鬆」がなかなか良い。髭ではないのですよ。

戦車と自走砲の違いがいつまで経っても分からない。分からないままに最近考えたこと。
まず、戦車は戦車兵が自走砲は砲兵が扱う、という説明を読んだが、これは戦車兵と砲兵の違いが分からない私には理解できる説明になっていない。
現在も続くロシアによるウクライナ侵攻・ウクライナによる防衛を見ていると、「大砲」というのは、観測システムや照準システムとともに機能して「見えない遠くの敵」を撃つもののようだ。観測・照準や砲弾供給も含めた大規模システムの末端の一つが「大砲」であって、大砲だけ闇雲に撃つものではない。一方、戦車はそれ自体が動き回って「見える敵」を探して撃つ(映画表現でしか知らないからこう思うが、おそらくシステム化を進めているのだろうけれど)。
話は飛んで、ナポレオンは砲兵出身だったから、皇帝となってからも科学者を重用したという。
ナポレオン戦争の時代においてすでに、観測・照準が数理的に行われていた(あるいは、その萌芽があった)から、ナポレオンには科学への親近感や信頼感があったと思われる。
ということで、「見えない遠くの敵」を数理的に撃つために砲兵が運用する車両が自走砲、「見える敵」を撃つために機動性を重視しているのが戦車、と私は考えている。もちろん、物事にはグレーゾーンがあることも多いし、技術上の問題で別れていたものが、技術上の問題解決によって収斂していくこともあるし、「縄張り争い」も世の常だから、平射する(見える敵を撃つ)自走砲もあるかも、とは思う。
(まあ、私がどう考えようが、誤っていようが、どうでも良いのだが)。

30年ほど前、韓国映画「反則王」を見た。いろいろな国の映画を見てみようくらいの気軽な気持ちだった。
喜劇であり当然面白かったし、多少泥臭い演出も印象的だった。主人公が突然アイドル衣装で出てきて、「演歌」を歌って、好きな彼女にアタックする妄想を描くのなど、なんてわかりやすいのだろう、という感じ。
韓国映画は今もよく話題になり、反則王の主演ソン・ガンホ氏もSNS上でよく見かける。ふふふ、私は30年前から知っておるのだよ、と(まったく意味はないが)嬉しい気分になるのであった。

韓国ドラマ Don't Worry, I'm a Ghost | 걱정마세요, 귀신입니다
役者さんが日本人ぽい。主役男性は野間口氏、女性は上白石氏などなど

ウルトラマンに出ていた女優 小川涼さん。セリフ回しも達者で、コミカルな芸。大した役者さんだと思った。
銅金カナオという派手でいささか均衡を欠いた研究者を演じておられたが、たいへん好演。

祖母は名前に変体仮名を使っていた。
明治生まれの「ふさ」の「さ」
https://cid.ninjal.ac.jp/kana/detail/110030010/
「しづ」の「し」
https://cid.ninjal.ac.jp/kana/detail/120050010/

愛知県の「愛知」は律令制の「愛知郡」から来ているのはおそらく間違いなく、その「愛知郡」は「年魚市潟」から来ているのも間違いないであろう。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B9%B4%E9%AD%9A%E5%B8%82%E6%BD%9F
年魚市潟の一部が鳴海潟であるが、歌枕としては鳴海潟も有名だったのだから、「愛知」に代わって「鳴海」が使われていても良かった気がする(元鳴海町民として)。
神奈川だって、神奈川郷が神奈川県なんだから、鳴海が県になっても良いのだ(暴論)。

愚息が幼かった頃、「あやかちゃん」を「あやちゃかん」と言っていた。
「あやかちゃん」ママがそれを気に入り、メールアドレスを「あやちゃかん」にして下さっていた。

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